全国初 iPodを授業に活用 松伏第二中

松伏町立松伏第二中学校(石川勉校長、生徒六五六人)では、全国で初めてiPod(アップル社の携帯音楽プレーヤー)を活用した授業を始め、注目を集めています。

同校の大西久雄教頭によると「黒板を使った授業に比べると生徒のくいつきが違い、興味や関心も持続します。一方、教師もこれまでにない切り口ややり方が提示でき、授業の改善につながります」とのこと。最初、保護者の一部には「集団で学ぶという本来の姿と違うのでは…」という声もあったようですが、一時限の授業の中で実際に使用するのは五〜二十分、個の学びに活用することで生徒が集中し理解も深まるという認識が広まり、今では多くの方が好意的に受け止めているそうです。

一クラスの授業に使用するiPodは四二台。効果は確認できても学校の予算でそれだけの台数を揃えることはできません。そこでPTA(08年度・加藤伸二会長、09年度・大貫智世美会長)が費用を負担することに。「子供達のためになることですし、先生方にも大人向けの土曜学校・學ナビで大変お世話になっていますので協力を決めました。昨年と今年の二年がかりで予算を組み、最新型のiPodを購入して先日学校に寄贈しました」と加藤前会長。

現在、八教科・九五種類の教材があり、そのほとんどは先生方の手作り。大西先生の教材はアップル社のデジタル教材コンテストで優秀賞を受賞しています。制作について伺ったところ「一番大切なのはスキル(表現技術)でなく、アイデアです。どう提示したら生徒の理解を深めることができるか、そのアイデアがしっかりしていればスキルは他の先生に補ってもらうこともできます」という答えが返ってきました。

【写真】iPod

昨年末、県内の先生方と「でじたま」(デジタル教材in埼玉)という研究グループを立ち上げ、教材ソフト開発を勉強したり、意見交換したりしているそうです。

残る一教科は理科。「この夏休みを利用して、顕微鏡やガスバーナーなど、実験器具の取扱を説明した教材を作りたいと考えています」とのこと。

幾つかの教材を見せていただきました。美術の教材は、水彩画の技法を構図の取り方から始まって下書き、仕上げまで六段階に分けて映像と解説で示しています。それぞれの生徒が自分の進度に合わせてそれに習いながら描いていくので、どの生徒も集中し、とても静かな授業風景になるそうです。もちろん、先生も教室内を回って個々にアドバイスをします。

社会科で都道府県の位置を覚えるための教材は、各地方ごとにまず県の位置が、続いて県名が表示されます。最後はランダムに表示されるので、生徒たちはゲーム感覚で取り組むことができるといいます。最後にテストを行えば生徒も真剣に覚えようとするので更に効果的とのこと。

デジタル教材の幾つかは、アップル社のホームページからダウンロードできます。ウィンドウズ・パソコンでも見ることができますので、関心のある方はお試し下さい。

また、大西先生に連絡すれば個別に分けてもらうことも可能だそうです。「デジタル教材を活用するには、まず中心になる先生が必要です。PTAの理解と協力も欠かせません。でも、iPodは簡単に大画面モニターに接続できますので、先生が教室の生徒全員に提示するという形でまず取り入れてみてはいかがでしょうか。そうすれば、先生の授業スタイルも変わると思います」と大西先生。

なお、同校の取り組みについては、今年十一月の埼玉県PTA研究大会(春日部)でも発表されます。

<< 1つ前のページへ 次のページへ >>
目次のページへ