第五十六回埼玉県PTA研究大会−春日部市民文化会館−

【写真】第五十六回埼玉県PTA研究大会の様子
研究大会・パネルディスカッション

 十一月二十七日、春日部市民文化会館に県内各地から四九〇名の会員が集い、第五十六回埼玉県PTA研究大会が開催されました。開会式に続いて行われた表彰式では、文部科学大臣賞、日本PTA全国協議会会長賞、全国広報紙コンクール入賞の各PTAが紹介され、続いて埼玉県PTA連合会広報紙コンクールに入賞した各PTAに当連合会・岡安会長から表彰状が手渡されました。今大会のテーマは「これからの教育」。松伏第二中学校の事例発表とパネルディスカッションが行われ、充実した発表と討議が行われました。全会一致で「大会宣言」を決議したあと、閉会式では当連合会のイメージソング「ふるさと」を全員で合唱、たいへん有意義で心温まる大会となりました。

iPodで授業が変わった!--事例発表・松伏二中

携帯電話やインターネットなどの普及により、急激に発達する情報社会に生きる子供たちをさまざまな危険が取り巻いています。そんな状況への理解を深め、子供たちを正しく導き、守っていく必要があることは言うまでもありません。その一方で、とかく暗いイメージで捉えがちなIT機器を安全に活用し、新しい切り口で教育に役立てていく方法を研究したい--それが今大会の趣旨でした。

事例発表では、iPod(アップル社の携帯映像プレーヤー)を授業で活用し大きな成果を上げている松伏二中の取り組みが紹介されました。

PTAが中心となって運営する子供向けの「学ナビ」と大人向けの「學ナビ」という二つの土曜学校を通じて地域と学校との交流が深まり、iPodを授業に活用することで子供たちの学習の質が高まってきたというのです。

iPodで使用する教材は、どれも先生方の手作り。その内容も、iPodを大型液晶テレビに接続して画像やビデオを見せる形から、生徒一人ひとりがiPodを手にして学習に活用できるようなものに進化していきました。

最大の効果は「iPodを使うと生徒の食いつきが違う」ということ。そして、生徒たちの興味関心を引き出し、分かりやすくしようと教材を工夫する中で先生方の授業スタイルも変わってきました。これがもう一つの効果なのだそうです。

クラスの生徒全員にiPodがゆきわたるには四二台必要です。最初はアップル社の協力を得て無償貸与してもらいましたが、学校側の相談を受けたPTAが二年間にわたって予算を組み、学校に寄贈することに。

今では、新入生の校歌学習から、数学、英語、美術や体育の授業に至るまで、さまざまな教科の学習に有効に活用しているそうです。

見て楽しい。中味が分かる--実際に使ってみて

パネルディスカッションでは、松伏二中を訪ね実際にiPodに触れたパネラーが感想を述べました。

「使い方も簡単でいいなと思いました。生徒さんが授業に集中し、積極的に参加していることで、教育効果があると感じました」(和光二中・川窪会長)

「視覚で見て楽しい、画面が動く、中味が分かる。本当に魅力的なものなんだということが分かりました」(白岡中・黒須会長)

導入にあたり、先生方の反応が気になるところですが、松伏二中・大西教頭は「確かに教員は保守的で、新しいものはできるだけ避けて通りたいというようなところがあります。しかし一回使って便利さが分かると、教員は飛びつくのが早いのです。そこでまず研修会を行い、こんなに便利に使えるものがある、と実際に触って理解してもらいました。そうすると、自分で積極的に学ぼうとする姿勢が出てきました。学校にマックのコンピュータを入れて使える環境を整えたことや、マスコミに働きかけて新聞などに載ったことも大きかったと思います」と語りました。

道具に振り回されず、安全・有効に活用しよう

IT機器を授業に活用することについては、「松伏二中の発表は、予想以上のものでした。まず教員と生徒の関係が大事で、その上で素晴らしい実践をされているのだと思います。iPodについては、ソフトの面を整えていくことで、もっともっと授業に活用できるのではないかと思いました」(県教育局生徒指導課・大島指導主事)、「機械の方ばかりに目が行きがちですが、大島先生の仰るとおり、結局は人と人をつなぐツールでしかないのです。先生を信頼してどんどん使ってもらえばいいと思います」(県P連・関会報編集委員長)、「人から人という部分は教育の本質に関わる大切な点だと思います。iPodでなくても、学校のパソコンルームでパソコンを使って何かやるという方法もあるのでは…」(和光二中・川窪会長)などの意見が出ました。

携帯電話については、「最近携帯電話の持込禁止が話題になっていますが、もっと大切なのは生徒が授業に集中できる環境を作っていくことだと思います」(大島指導主事)、「会場の皆さんにはいろいろな講習会に積極的に参加し、学んだことを周囲の保護者に伝えていただきたい。それが私たちの使命だと思います」(高田委員長)などの意見が出されました。

その後、各パネラーから県P連に対する要望・希望が出され、岡安会長が「子供たちを取り巻く環境もどんどん変わっていきます。PTAも過去にとらわれず、現状を正しく把握してどう対応していくかが大切だと思います。皆さんのアドバイスを聞かせていただきながら、対応していきたいと思います」と述べ、パネルディスカッションを締めくくりました。

研究大会を終えて
県P連会長 岡安 政彦

子ども達にインターネットの機械を与える保護者やその提供する携帯電話事業者の果たす役割は重要になっています。

現在、携帯電話等の有害情報から子ども達を守るため、埼玉県では青少年健全育成条例の改正作業を進めていると聞いております。これは、保護者や携帯電話事業者の責務を定めることにより、フィルタリングサービスの更なる普及を図るための改正です。今後も埼玉県とPTAの連携の中、子ども達のよりよい環境作りに取り組みたいと思っています。

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